拙者、ゴルフ侍と申す。
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」
平家物語に出てくる冒頭の一節である。
和訳すると「祇園精舍の鐘の音には、諸行無常すなわちこの世のすべての現象は絶えず変化していくものだという響きがある」という意味である。
ゴルファーもこの世界の法則からは逃れられない。
「今この瞬間の打球の音、諸行無常の響きあり」
どれだけ好調なゴルフが続いていようとも、日々を通じてゴルフは腐っていく。
体力が落ち、精神力は衰え、スイングは弱くなる一方である。
ゴルフに対する考え方
老化現象には誰も逆らえない。
昨日より今日、今日より明日。
何もしなければ段々と力が衰えていく。
ゴルフも同じことか?
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いや、そうではない。
ゴルフの考え方次第で、諸君は「衰退」か「成長」かを選択できる。
どちらの選択を採るべきか、もう答えはいらないだろう。
①経年劣化(けいねんれっか)
「経年劣化」という言葉、諸君も聞いたことがあるだろう。
意味としては、「年月が経つうちに製品の品質・性能が低下すること」である。
そう、ポイントは「製品」というところ。
製品は完成品であり、その時点から何も変化をしない。
どれだけ良い製品だったとしても、時代の流れの中で、故障したり、陳腐化したりしていく。
製品とは、ゴルファーで言えば「スイング」である。
自分自身が持つ部品を組み合わせて、最高のパフォーマンスが出るように作り上げられたものだ。
日々の努力やレッスンプロの力を借りて、己のスイングが完成したとしよう。
しかし、その完成度に甘んじて、その後の変更や改善を考慮していない。
「昔は良かったのにな・・・」
とぼやくゴルファーはこれに当たる。
この考えの者であれば、そこまでの腕前でないことは確かだ。
②経年優化(けいねんゆうか)
「経年優化」とは、聞き慣れない言葉だろう。
年月が経つにつれ、老いて古びていく「経年劣化」が自然の摂理というもの。
それに対して「経年優化」とは、「年月が経つにつれて、その価値を高めていく」という考え方である。
どうやら不動産業界でよく使われている言葉のようだ。
時間が経つことで、その希少性が高まるということではない。
時間を経て、ワインのように味わい深くなるのである。
ゴルフに置き換えれば、時が経つごとに経験も知識も増えることで熟成していく。
一つの成功体験に囚われることなく、日々の失敗や挫折のフィードバックを活かし、その時々に合わせたスイングにバージョンアップしていく。
一瞬のタイミングで人生最高のスイングを手に入れたとしても、その状態を満たす条件(体力・精神力・柔軟性など)は変化していく。
「不変のための変化」
矛盾しているようで、トッププロが抱いている概念だ。
トップに立った時点で、進化を止めるアスリートはいない。
愚直により良いパフォーマンスを追究することが真のゴルファーだ。
まとめ
以上、「経年劣化」と「経年優化」の違いについて説明した。
①経年劣化: 年月が経つうちに製品の品質・性能が低下すること
②経年優化: 年月が経つにつれて、その価値を高めていくこと
アマチュアゴルファーが陥りがちなのが、過去の栄光を追いかけること。
確かに自己最高のスイングだったかもしれないが、もう今の条件では叶わない。
そのままでは「経年劣化」するのが目に見える。
それよりもっと他の理論を試していけば、過去最高のゴルフが完成するかもしれない。
「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」
昨日より今日、今日より明日。
過去に囚われることなく、向上心を持ってゴルフに向き合おうではないか。
(ゴルフ侍)